第二言語を習得する際、4技能の一つに「話す」を紹介した。「話す」をブレイクダウンすると「発音」と「内容」に分けられる。どんなに充実している内容を話しても正しく発音がされていないと聞き手に正しく言語情報が伝わらない。特に、ビジネスでは顕著に表れるため、正しく発音で話せているか如何で学校会話からビジネス会話へと繋がるかどうかのターニングポイントとなる。
◆なぜ、正しい発音で話せないとビジネス会話へ繋がらないのか
まず、学校会話とビジネス会話の違いを挙げてみる。
- 学校会話では、聞き手はあなたが正しく発音できないことを知っているので会話がなんとか成り立つ
- 学校側から見れば、あなたはお客様であり正しく発音できずとも大きな問題にならない
学校会話では、お金を払っているお客様的立場であり、周りは同じ学生であり、あなたが留学生であるということも含め、あなたのことを理解しているため多少の発音の拙さは大目に見てもらえる傾向にあるが一方のビジネスでは、金銭やクリーム等が発生するため、発音の拙さは大概認めてもらえない。
ビジネスで外国語を使う職種に就くには、まず採用試験でパスされる必要がある。外資系企業では必ずと言っていいほど複数回のインタビューがあり、発音もしっかりと確認されるので、ここでふるいにかけられる。
仮に、パスしても電話対応やプレゼンなどで聞き手に負の心証を与えるケースもあり、クロージングは無論、聞き手側からしたらちゃんと理解しているのか不安になりクレームに繋がる可能性がある。役付きなら、部下から認めてもらえないことやサポタージュされることがある。
◆例外もあり、発音が拙くても通用する職場がある
- 日本企業の海外支店への駐在員か日系企業の現地採用
- 取引先が日系企業、もしくは下請企業
- 日本人ターゲットの外資系企業
- 多少の発音の拙さを感じさせないほどのスキルや経験を保有
以上の4つは例外であり、海外であっても日本社会が成り立っている職場環境、立場が相手より上の場合、ターゲットが日本人の場合に限り、それほど正しい発音ができてなくても採用される可能性がある。4つ目だが、正しい発音で話すことも大事だがメイン業務に支障がでないと判断された場合である。
◆発音は「教養」である
日本の従来の教育では、発音記号から勉強し正しい発音が定着してから次のステップという教育体系になっておらず、一人ひとりに目をかける時間も余裕もない。従って、正しい発音をマスターするには個人が学校外で個別に学ばなければならない状況にある。マスターするまでは、新しい単語がでるたびに発音記号を確認し、発声し、確かめ、定着するよう、地道なルーティンワークをこなす必要がある。
特に、複雑な発音を強いられる言語ほど日頃あまり使わない顔の筋肉や舌などを使うため最初は非常に疲れるが、正しい発音ができるようになってくると、顔つきが現地の人のようになってくる(例外もある)。
一方で発音記号から発音の勉強をしなくてもアウトプットできる人も存在する。音楽経験者だ。彼らは耳が鍛えられているため、インプットとアウトプットがオウム返しのように、きれいに発音できる人が筆者の周りでは多い。ただし、デメリットもある。香港やインドなど癖のある英語だと難しいようだ。耳に入ってきても脳で理解できず、言語でなく”雑音”として認識されるようだ。
他方、外国人が第二言語としての日本語の発音を学ぶ際、体系的にしっかりと学べる発音メソッドがほとんどない。無論、大学等で音声学を学ぶが、それはあくまで理論的、学術的要素が強く、実践的とは言い難い。筆者が外国人が第二言語で日本語を教える際、留学生からの戸惑う声を聞く。
しかしながら、日本語の発音は、他言語のように複雑ではなく、舌や唇、鼻音などをあまり使わずとも”なんとなく発音”できることも体系的なメソッドが生まれにくい土壌があるのかもしれない。
日本人と変わらない発音をするには、母語の干渉も受けるが、各個人が独自に勉強し、微妙に調整していることがある。特に、フランス人やドイツ人、カナダ人、アメリカ人の発音は相対的にきれいで、クリアな発音をする人が多い。一方で、アジア出身者の多くは、発音に母語が干渉される学習者が多く、発音に各国特有の個性が存在する。