「人種差別」と「表現・言論の自由」の対立が激化している。「米黒人男性暴行死事件」を皮切りに、米国国内で「人種差別」と「表現・言論の自由」の2極化が加速し激しくなっている中、SNS大手Facebook(以下、FB)の「表現・言論の自由」への批判が高まり、FBへの広告掲載をボイコットする企業(ノースフェイスやパタゴニア、ベン&ジェリーズ、エディバウアー、アイリーンフィッシャー、REI等)が声を挙げている。「人種差別」と「表現・言論の自由」の定義や判断基準が人種や個人により曖昧であり、切り分けが難しい中、「ことば狩り」へのエスカレートが懸念される。
◆人種差別の前例があるコカ・コーラ社の声明内容は
米飲料大手コカ・コーラ社のジェームズ・クインシー(James Quincey)CEOはは27日、自社サイトにてソーシャルメディア(SNS)への広告出稿を少なくとも30日停止すると発表した。
コカ・コーラのジェームズ・クインシー(James Quincey)CEOは「世界には人種差別のための場所はなく、ソーシャルメディア上にも人種差別のための場所はない」と声明で述べている。ソーシャルメディア各社には「より大きな説明責任と透明性」が必要だと主張した。FB以外にもTwitterやYouTubeも含まれるようだ。
他方、同社は過去に「人種差別」で訴訟を起こされており和解金1億9250万ドル(約210億円)という和解金としては最高額を記録した。内容は、黒人に対する賃金、レイティング、ファイアなど人事労働関係※1で差別をしたとして訴えられている。
◆日本はこれまで人種差別と闘ってきたパイオニア的存在
日本は1919年のパリ講和会議で人種的差別撤廃提案を行っている。国際会議では日本が提案したが、結果不成立の形で終わった。採決参加人数16名の内、賛成11名(フランス、イタリア、ギリシャ、ポルトガル、チェコスロバキア等)、反対5名(米、豪、英、ブラジル、ポーランド、ルーマニア)で多数決上では過半数を取得したももの、全会一致を言う米議長のもと、不成立に終わった。
余談になるが、筆者が気になる点は、FBCEOの中国への対応の変化と、その後の批判が集中していることだ。当初、中国への理解を示していたが、突如名指しで中国を批判している。その後、人権団体がFBへの圧力を増しているように感じるのは気のせいだろうか。FBはNAACP以外にも、ADLなど6団体からボイコット活動が行われているようだ。
参考文献
- NAACP(National Association for the Advancement of Colored People)全米有色人種地位向上協議会
- コカ・コーラ社公式サイト声明発表
- コカ・コーラ社和解金(Coca-Cola settles race suit)
- ADL(Anti-Defamation League「名誉毀損防止同盟」)公式サイト
※1 米国的経営には、終身雇用制度がなく、年単位の有期雇用(契約社員)が日本でいうところの正社員に相当する。メリットとしては、①賃金が高い②転職が不利にならない③キャリアアップなどが挙げられ、それに関連するハード・ソフト両面が発達している。
一方の日本的経営は、終身雇用制度という極めてまれな制度を導入しておりメリットして①賃金差が少ない②無期雇用③忠誠心などが挙がられ、社内教育が発達している。
他方の発展途上国や新興国は、まず民間企業が少なく小規模企業(家族経営)や個人事業主なることが大半であり、上記には含まれない。そのためか、現地の人は日本などの外資系の現地支社・工場に入ることで、比較的安定した高収入を得ることが可能であり、未だに人気のある選択の一つとなっている。